臨床実習サブノート 知っておきたい理学療法評価のポイント・5
大腿骨頸部・転子部骨折患者を担当した時
鎌谷 秀文
1
Kamatani Hidefumi
1
1赤穂市民病院
pp.979-990
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101299
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はじめに
転倒による骨折は,脳卒中とともに高齢者の要介護主要原因の1つに数えられ1),リハビリテーション(以下,リハ)が円滑に進まない場合は,日常生活動作(activities of daily living;以下,ADL)を著しく制限して生活の質(quality of life;以下,QOL)を低下させることになる.
わが国の人口は2006年をピークに自然減が始まっているが,高齢化率は今後高まり,65歳以上の人口割合は2050年には現在の2倍近い約36%にも達すると推計されている2,3).また,高齢になるほど要介護者に占める転倒骨折者の割合は増え4),四肢骨折のうち大腿骨頸部・転子部骨折において,特に女性の発生率上昇傾向がみられる5).大腿骨頸部・転子部骨折の年間推計発生率は,1987~2002年の15年間で約2.2倍に増加しており6),歯止めがかかっていない.今後は理学療法士も治療に関する知識や技術だけでなく,疫学,転倒予防に関する理解を深めておくことが求められる.
本稿では,学生が臨床実習に出向いて,大腿骨頸部・転子部骨折(大腿骨近位部骨折)の評価を行う際に必要不可欠な,臨床治療における思考や場面のポイントを示した.それによって,評価と治療が表裏一体のものであることが理解でき,学内で学習した評価技術や知識を具体的に組み立て実施できるような内容・構成とした.
なお,大腿骨頸部・転子部骨折(大腿骨近位部骨折)の呼称表記は,大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン7)の表記に従った.
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