特集 痛みの病態生理と理学療法
「慢性痛症」のメカニズム
熊澤 孝朗
1,2
Kumazawa Takao
1,2
1愛知医科大学医学部痛み学(ファイザー)寄附講座
2名古屋大学
pp.87-94
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101107
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痛み概念の変革
「侵害受容器(nociceptor)」という言葉がある.ノーベル賞生理学者のSherringtonが,組織を損傷するに至る(noxious)刺激(つまり,痛み刺激)に応ずる感覚受容器という意味で,もの言わぬ動物で行う痛みの実験において用いることを提唱した言葉である.この語が示す意味は,「痛み」はヒトにおいて言葉で訴える感覚であるということを改めて強調し,さらに,言葉を発しない動物においても,傷害部からの感覚入力に対する「痛み」反応が生理的に存在することを表している.
身体の傷害,場合によっては一命にも関わるような警告信号は,生物の最も基本的な情報であり,昔から人は痛みについて大きな関心をもち続けている.痛みの研究には長い歴史があり,その歴史は,痛みというものをどう捉えるべきかという根源的な問題について,繰り返し揺れ動いてきたことを示している.
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