講座 「複雑系」と理学療法・2
身体運動研究と複雑系
長崎 浩
1
Nagasaki Hiroshi
1
1東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科
pp.933-937
発行日 2007年11月15日
Published Date 2007/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101062
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運動学と運動制御論
身体運動の研究領域は,リハビリテーション医療では運動学(kinesiology)であるが,他方で身体運動制御論(human motor control)と呼ばれる分野がある.両者は実のところ別々の伝統や発想に基づいて研究されてきており,おおよそ事情は今日でも変わりがない.研究を進める際には,この差異に気付いておく必要がある.
第二次世界大戦後の米国では「通信と制御」の工学(サイバネティクス)が勃興したが,身体運動制御論もこの影響のもとに始まった.認知心理学でいう「情報処理論的アプローチ」がこれに当たり,運動研究も心理学者が中心になって開拓されてきた.キネシオロジーがリハビリテーション医療を,あるいは生体力学がロボットや人間工学を応用分野と想定しているのに比べて,身体運動制御論の関心は人間行動を「理解する」ことだといってよいかもしれない.理解してどうするのか.自然の妙に「ただ驚く」のである.
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