先輩からのエール
目指せ理学療法専門性の確立を
関 勝夫
1,2
1理学療法科学学会
2埼玉医科大学短期大学
pp.52
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100407
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療育の「心」に初めて触れたのは,今からちょうど40年ほど前の東京オリンビック開催の年であった.当時は,筆者が「整肢理療士」として,肢体不自由児施設整肢療護園に採用されたときでもあった.ここでは,医師中心の医療ではなく,五味重春先生(当時医務部長)の司会で,医療・教育・福祉部門を担当する各専門職の職員からなるケース会議により,入園児一人ひとりの療育方針が決定されるなど,既に患者中心の医療システムが敷かれ実施されていたのである.
わが国の「リハビリテーション医療の父」と仰がれる,高木憲次博士(初代整肢療護園園長)の提言による,整肢療護園の療育の理念とは,「たとえ肢体に不自由なところがあるも,次の社会を担って我邦の将来を決しなければならない児童たちに,くもりのない魂と希望をもたせ,その天稟をのばさなければならない.それには,児童を一人の人格として尊重しながら,先ず不自由な箇処の克服に努め,その個性と能力に応じて育成し,以って彼らが将来自主的に社会の一員としての責任を果たすことが出来るように,吾人は全力を傾盡しなければならない」とある.以来,小生が障害児(者)に対し,自分に与えられた小さな「療育の窓」から理学療法全般を見ることができたことは,後々何よりも大きな支えとなったと思う.現に今日まで,脳性まひ児の運動療法において無限の潜在能力を追い求め続けることができたことに併せて,成人・高齢者ならびに虚弱高齢者などが,自ら障害を克服し自立と社会参加を通して,相互に身体と心を“育てる・創る・老いる”と,人間発達の原点を学び捉えることができたと思う.
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