特集 歩行練習
半側空間無視を伴う片麻痺患者の歩行練習
伊藤 克浩
1
Ito Katsuhiro
1
1山梨温泉病院理学療法課
pp.613-617
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100364
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はじめに
半側空間無視は体外空間の半側にある対象を無視する症状で,視空間失認の一型として位置づけられている.半側空間無視は脳損傷者の日常生活活動(ADL)やリハビリテーションの阻害因子として,これまで多くの研究がなされてきた.一般に,右大脳半球の頭頂後頭葉接合部の病変で生じるとされているが,右後頭葉や前頭葉の病変,視床や被殻などの皮質下の病変でも生じることが知られている.また,左大脳半球病変で生じた報告もある.半側空間無視は経過中に改善あるいは消失することがしばしばあるが,残存する場合も少なくない1).また,半側空間無視はそれだけが単独で現れることはほとんどなく,病識欠如も伴う.
そして歩行練習で困難性を感じる症例は,「左のものを見落とす」という問題だけでなく,無頓着さ,行為のペーシング障害などの高次脳機能障害の合併により危険性を伴うので,監視歩行レベルから先に進むことが容易でない症例が多い.また,線分抹消テストのような机上テストで半側空間無視症状が疑われる片麻痺者の多くが,姿勢緊張の問題やバランスを含めた「定位」の問題を合併しており,それらの身体機能の改善により左側からの情報に着目できるようになる場合も多い.
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