わだい
多剤耐性(MDR)遺伝子
佐藤 宏
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1関東逓信病院血液内科
pp.357-358
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906564
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■多剤耐性(multidrug resistance;MDR)
白血病や悪性リンパ腫の治療として多剤併用化学療法が選択されることがほとんどであるが,これに伴い臨床家を悩ませ患者を苦しませるものが,薬剤耐性現象である.十分な治療効果が期待される投与量・投与方法であるにもかかわらず化学療法後に相当量の腫瘍細胞が残存する場合や,以前は奏功していた化学療法を反復してももはや反応を認めない場合などが,これに当てはまる.特に,化学構造や作用機序に共通性の少ない複数の薬物に対して,同時に抵抗性を示す現象を多剤耐性と呼ぶ.実際の症例に認められる薬剤耐性はMDRであることが多い.
初診時には薬剤感受性であった白血病細胞が治療継続中や再発時に耐性となる事実を研究するために,腫瘍細胞から樹立された細胞株を抗癌剤を含む培養液中で増殖・継代させ,液中の薬物濃度を漸増させる方法が広く用いられた.これによって数多くの薬剤耐性培養細胞が得られたが,それらの中には耐性誘導に使用された薬物のみならず,他の複数の抗癌剤に対しても同様に耐性を示すものが見いだされた.
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