増大号 匠から学ぶ 血栓止血検査ガイド
1章 概論
一次止血による止血機構
矢冨 裕
1
1国際医療福祉大学大学院
キーワード:
出血傾向
,
一次止血
,
血小板
,
血管
Keyword:
出血傾向
,
一次止血
,
血小板
,
血管
pp.892-897
発行日 2023年9月1日
Published Date 2023/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543209076
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はじめに
人類の歴史は,感染症との闘いの歴史であったとよく言われる.人類は,その闘いの過程で,精緻な免疫能を獲得し,感染症に立ち向かってきた.同じように,人類の歴史は怪我との闘いの歴史であったとも言える.
人体においては,やはり精緻な仕組みで血栓が形成されるが,これは,長い歴史において,人類が生存のために獲得したものと考えられる.つまり,平時には血管内では血栓が生じないで体内循環が維持される一方,怪我をして出血した場合には局所で止血栓が形成され,われわれの体からの失血が防がれるわけである.本来の生理的過程では,血管内では血栓ができず,血管外の出血巣で止血栓が形成されるべきところが,病的な場合にはこの逆,つまり血管内で血栓ができ,血管外に出血しても止血栓ができない.このように,血管内で血栓ができるのが血栓性疾患(血栓症)であり,血管外に出血しても止血栓ができないのが出血性疾患である.本稿では,生理的止血機構とその破綻による出血に関して記述するが,そのなかでも初期の止血栓形成,つまり,一次止血を中心に概説する.
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