増刊号 誰でもわかる遺伝子検査
Ⅱ.各論—遺伝子検査はどういうときに必要なのか
3.応用編—遺伝子検査を利用する
3)遺伝性疾患
(3)甲状腺疾患
巽 圭太
1
,
網野 信行
1
1大阪大学大学院医学系研究科生体統合医学専攻生体情報医学D2(臨床検査診断学)
pp.1102-1106
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906370
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はじめに
甲状腺疾患は,機能異常と腫瘍に大別される.甲状腺機能異常は甲状腺の濾胞細胞における甲状腺ホルモン(T4,T3)の生成・分泌の異常のほか,上位の視床下部や下垂体での異常や末梢組織におけるホルモン作用の発現の異常(不応)でも発症する(図1).遺伝性の甲状腺機能異常はまず先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)で解析され,蛋白質・細胞レベルで解析できるホルモン蛋白質,ホルモン合成酵素,ホルモン結合蛋白質で報告された(表).最近の10年間では,これまで蛋白質・細胞レベルでは解析が困難であった転写因子,ホルモン受容体,伝達器の異常に関しても,遺伝子異常が次々に明らかにされた.このほか,先天性甲状腺機能亢進症ではTSH(thyroide-stimulating hormone,甲状腺刺激ホルモン)受容体の異常が,甲状腺腫瘍では甲状腺髄様癌ではさまざまなキメラ遺伝子が報告されている.最近では橋本病やバセドウ(Basedow)病の感受性遺伝子や甲状腺腫瘍特異的に発現/抑制される遺伝子も同定されてきている.
本稿では,先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)を中心に紹介する.
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