増刊号 血液検査実践マニュアル
Part 5 凝固・線溶検査
4.ルーチン検査
1)検査の実際 f)FDP
末久 悦次
1
1大阪大学医学部附属病院臨床検査部
pp.851-854
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905489
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検査の目的・意義
生体内での線溶現象は,フィブリンの形成(血栓)を認めない線溶現象(一次線溶)と,形成された血栓を溶解する線溶現象(二次線溶)とに区別され,線溶亢進時には,フィブリノゲンもしくはフィブリンが産生されたプラスミンにより分解を受け,分解産物として血液中に存在することになる(図1).したがって,FDPとは,フィブリノゲンとフィブリンの分解産物の総称であり,血液中のFDPを検出することは,生体内での線溶亢進を意味していることになる.
また,FDPの生成は,産生されたプラスミンにより,フィブリノゲンのAα鎖およびBβ鎖の一部が切断されX分画となり,さらにY分画とD分画に切断され最終的にE分画とD分画に分解され,一次線溶のFDP(FgDP)として産生される.一方,二次線溶では,まず凝固系活性化に伴うトロンビンの生成により,フィブリノゲンからフィブリンポリマー,さらに安定化フィブリンに転化した後,プラスミンにより分解を受けることになり,互いに異なる分子から形成されるDドメイン2分子とEドメイン1分子を最小単位とするさまざまな(D2E)nが産生されることになる(図2).したがって,FDPは単一な蛋白ではなく,フィブリノゲン由来のFgDPとフィブリン由来のFDP(Dダイマー)との種々の構成により存在していると考えられる.
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