検査データを考える
尿蛋白
伊藤 喜久
1
1旭川医科大学臨床検査医学講座
pp.555-558
発行日 2000年6月1日
Published Date 2000/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905394
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はじめに
免疫グロブリンは抗体であり,その基本構造は重鎖(heavy chain)と軽鎖(light chain)が1対ずつ結合した二量体から成る(図1).重鎖はγ,α,μ,δ,εの5つのクラスに,一方軽鎖はκ,λの2つのタイプからなる.重鎖と軽鎖とのN末端110アミノ酸残基は可変部と呼ばれ,複雑な抗原構造に応じてアミノ酸配列を変えて,1対1に抗原に特異的に結合し除去,処理して生体の恒常性を維持している.言い換えれば,無数の可変部の異なる抗体がこれと対応する産生細胞(多クローン)から分泌されており,この理由から電気泳動上γ分画が幅広い不均一な荷電のピークとして観察される.
多発性骨髄腫,原発性マクログロブリン血症(クラスはIgM),リンパ腫など,免疫グロブリン産生細胞が腫瘍性に増殖すると,可変部の構造が均一な成分が産生され,電気泳動上γ分画を中心に,シャープなピークとして観察される.単一のクローンから産生されていることから,これをモノクローナル蛋白(M蛋白)と呼んでいる.
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