増刊号 病理組織・細胞診実践マニュアル
第III章 細胞診
3.細胞学的診断の基礎知識
2)正常の細胞所見と異型細胞
広川 満良
1
,
鐵原 拓雄
2
1川崎医科大学病理学教室
2川崎医科大学附属病院病院病理部
pp.218-226
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903506
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細胞形態学の基本的概念
細胞形態を観察する際には2つの基本的概念を心得ておくことが大切である.その1つは,自然状態である正常細胞は形態的に均一で,円形を好み,予測性があるが,異常状態の細胞,例えば腫瘍細胞は不規則で鋭く角張っており,極端さがみられることである.正常細胞とは異なる後者の所見に対しては一般的に異型性という言葉が用いられている.もう1つの基本的概念は,核の形態はその細胞の活動性を,細胞質の形態はその細胞の機能的分化を反映していることである.細胞の活動性はeuplasia(正常状態・生理的状態),retroplasia(退行状態),proplasia(進行状態),neoplasia(腫瘍状態)の4つに分類される(図1).
正常細胞とは,健康でストレスのない生理的な細胞であるが,その活動性は細胞の種類や分化度によりかなり異なる.例えば,未熟な骨髄細胞は正常状態で分裂・増殖をしているが,脂肪細胞が正常状態で分裂・増殖することはほとんどない.また,同じ扁平上皮細胞でも細胞の活動性は部位により異なる.基底層近くの細胞は分裂能力があるが,表層の細胞では活動性が低い.細胞の活動性がそれぞれの正常状態の範囲内であれば,euplasiaということができる.
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