トピックス
薬剤耐性白血病細胞の検出
小林 広幸
1
1東海大学医学部薬理学教室
pp.567-570
発行日 1998年6月1日
Published Date 1998/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903437
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はじめに
造血器腫瘍の一部は骨髄異形成症候群から白血化した症例のように初めから抗腫瘍剤に反応せず,また化学療法により寛解した症例も多くは数年以内に再発し,同一薬剤のみならず多種類の抗腫瘍剤にも抵抗性(多剤情耐性)となり不幸な転帰をとる.また,同じ病型でも個々の症例で,特に再発時には治療反応性が異なることが多い.したがって,症例ごとに特定の抗腫瘍剤に対する治療反応性をあらかじめ検査できれば,感受性のある薬剤を選択したり,耐性となった薬剤を避けることにより,無用な副作用を未然に防ぐことができる.
急性白血病が治療に抵抗性を示す主な要因として,①白血病細胞の抗腫瘍剤に対する感受性の低下(細胞性薬剤耐性),②化学療法と化学療法の問の白血病細胞増殖速度の増加(増殖能亢進による薬剤耐性),③薬物動態学的な薬剤耐性,に分けて考えるとよい.各要因に対する検査法として,①に対しては耐性の分子マーカーの検討,薬剤感受性試験,②に対しては骨髄検査による白血病細胞の推移,増殖や分化の分子マーカーの検討,③に対しては薬剤の血中および細胞内濃度の測定などが挙げられる.このうち,①と②においては,腫瘍細胞の側に原因が求められ,腫瘍細胞を生化学的・分子生物学的に解析することによって,薬剤耐性の分子機構を明らかにすることが可能である.
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