今月の臨床 胎児疾患の管理─胎内治療の時代を迎えて
胎内治療の適応と実際
パルボウイルス感染症
松田 秀雄
1
1防衛医科大学校産婦人科
pp.1227-1231
発行日 2005年9月10日
Published Date 2005/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100389
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
これまで,パルボウイルスB19による重症胎児貧血・胎児水腫の治療には子宮内輸血が施行されてきた.しかしながら,治療行為がもたらす利益が常に治療行為自体のリスクを上回っているかどうかについては十分なエビデンスが確立しているとはいい難い1).母体にガンマグロブリン点滴を施行した報告が1例あるが,胎盤をうまく通過して胎児に到達し効果を現しうる至適投与量は不明で,大量投与に伴う費用対効果が問題となる2).
われわれは妊娠20週で紹介されたB19による胎児水腫症例において抗パルボウイルスB19抗体高力価ガンマグロブリンを胎児腹腔内に投与(globulin injection into fetal peritoneal cavity : GIFPeC)し,治療効果を,①ドプラ超音波による胎児中大脳動脈収縮期最大血流速度(MCAPSV),②母体および胎児のB19─DNA定量の治療前後における経時的推移,③母体B19─IgG/IgMの推移により判定した.MCAPSVは短期間で明らかに低下し,胎児水腫は消失した.胎児腹水におけるB19─DNAは著明に低下した.一方,母体のB19─DNA,B19─IgG/IgMは短期間に変化しなかった.このことから,GIFPeCは一定の治療効果をもつことが明らかとなった.
症例を詳述するとともに,胎内治療としてのGIFPeCの可能性について考察を加えたい.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.