増刊号 輸血検査実践マニュアル
各論
輸血感染症
梅毒
大里 和久
1
1大阪府立万代診療所
pp.303-308
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903167
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はじめに
梅毒は第二次世界大戦後,その病相が大きく変わった.戦前は常に多数の患者が存在したが,戦後は特効薬のペニシリンの登場により流行期と休止期が明確に区分されるようになった.すなわち,終戦時の大流行の後,1965,1985年前後にそれぞれピークを持つ約20年間隔の流行をみせており,現在は流行の谷間にあると考えられる1).流行期には皮膚や粘膜に症状のある顕症梅毒が増えるが,非流行期には献血,集団健診,妊婦健診,人間ドック,他病時や術前の検査など偶然の機会に発見される潜伏梅毒が大半を占める.梅毒はおよそ20年間隔で流行しながらも患者は減少の傾向をたどっている.献血時の梅毒検査からみた一般集団の感染率は,特異的な検査法であるTreponema pallidum hemagglutination assay(TPHA)が導入された1969年が1.24%で,四半世紀後の1995年には0.10%へと1/10に低下している2).梅毒は性病予防法の対象疾患で,診断した場合には患者の居住地の保健所に届け出ることになっているが,これらをまとめた厚生省の報告では,最近の届出数は年間1,000人を超す程度で,かつての1/100以下に減少している3).
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