輸血検査メモ
人工血液
土田 英俊
1
1早稲田大学理工学部
pp.239
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903147
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医療における輸血の重要性や医療の進歩に貢献した事実をあらためて説明する必要はない.しかし,同種血輸血が,AIDSや肝炎などのウイルス感染,血液型不適合やGVHD(graft versus host disease)など抗原感作,それに煩雑で経費と時間のかかる検査や血液保存の限界(4℃,3週間)など,問題点も明確となっている.このため輸血の一部は現在,自己血輸血や造血因子投与による体内産生の強化に置換されつつある.出血程度が比較的少量の場合には,輸液による循環血液量維持の方法で救命可能であるが,循環血流量の半分以上を失った場合,輸血(赤血球の投与)が行われることになる.
災害の場合を含め,緊急時に際し,いつでもどこでも血液型に関係なく必要量を安全に供与できる人工血液(血液代替物)を常備する救護体制の確立は,医療の現場に必要不可欠となってきている.このためには,長期にわたり安定に保存ができる赤血球代替物の開発が緊急の重要課題となる.汚染のない無菌の工場で量産される代替物が理想であるが,現行輸血システムとの関連もあって,期限切れ献血血液から単離精製したヘモグロビン(Hb)を加工する方式を優先させようとしているのが現状である.
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