輸血検査メモ
輸血に伴う敗血症
清川 博之
1
1福岡県天神赤十字血液センター
pp.213
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903141
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血液製剤による敗血症は極めてまれであるとされてきたが,近年になって血液保存法の研究が進み,赤血球製剤や血小板製剤の保存期間が延長された結果,特に血小板製剤での細菌汚染が以前考えられていた以上に多いことが知られてきている.血液製剤の細菌汚染は,採血から血液製剤の調製過程の各段階で生じる可能性がある.献血者自身が無症候性の菌血症を持っている場合や,採血の際の不適切な皮膚消毒に由来する場合があるが,細菌で汚染された採血バッグによる汚染事故も報告されている.血液製剤の調製過程で洗浄赤血球のように外気に触れる可能性のある工程があれば,細菌汚染のチャンスがあると考えられ,このことは血液製剤を使用するときにもいえることで,新鮮凍結血漿を解凍する際に,汚染された加温槽を使用し,バッグと採血セットをつなぐ部分に汚染された水が付着すれば,輸血の際に細菌がバッグ内に入り込み,敗血症の原因になりうることは容易に想定される.
輸血による敗血症は,高熱,ショック,ヘモグロビン尿症,播種性血管内凝固異常(disseminated intravascular coagulation;DIC),腎不全などの重篤な臨床症状に特徴づけられる.もし細菌汚染による敗血症が疑われたら,輸血を直ちに中止して,血液バッグおよび患者の血液のグラム染色と細菌培養を行う.
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