輸血検査メモ
血液製剤の放射線照射
鈴木 元
1
1放射線医学総合研究所放射線障害医療部
pp.199
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903137
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致死的な輸血副作用の1つに輸血後GVHD(graft versus host disease,移植片対宿主病)がある(大塚節子・他論文,270頁参照).輸血後GVHDとは,輸血された血液製剤中に混入しているTリンパ球(移植片)が輸血を受けた患者(宿主)を攻撃するために起こる致死的な疾病である.いったん発病すると有効な治療方法がないので,輸血後GVHDの発症予防が重要である.日本および欧米では,血液製剤を放射線照射することによって混入しているTリンパ球を破壊する方法が採用されている.血液製剤の照射は保険適用を受けている.また,日本赤十字社では照射設備のない病院のために血液製剤の照射を請け負っている.
Tリンパ球は体の中で最も放射線感受性の高い細胞の1つである.一方,赤血球や好中球,単球,血小板は放射線に抵抗性である.このため適当な線量の放射線を照射すると,Tリンパ球を選択的に破壊することができる.日本輸血学会は15Gyから50Gyの範囲で血液製剤を照射するよう勧告している.放射線感受性は個体差があり,また同じ個体でも放射線感受性の異なるTリンパ球亜集団が存在する.実際,15Gy以下の照射では,無視できない数のTリンパ球が生き残る場合がある.また,50Gyを超す照射では赤血球に対するダメージが無視できない.
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