生体のメカニズム 凝固・線溶系・6
DICとその診断
朝倉 英策
1
1金沢大学医学部第三内科
pp.949-952
発行日 1996年10月1日
Published Date 1996/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902900
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DICとは
播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation;DIC)は,基礎疾患の存在下に,極端な凝固活性化状態となり,血管内に微小血栓が多発する重篤な病態である.進行した場合には,微小血栓の材料としての,血小板や凝固因子が低下したり(消費性凝固障害),凝固活性化に伴う線溶活性化が原因となって出血症状がみられることがある.一方,微小血栓のため重要臓器における微小循環障害をきたすと,臓器症状がみられることがある.臓器症状が複数の臓器に及んだ場合を,多臓器不全(multiple organ failure;MOF)と称している(図1).これらのDICの2大症状は,DICの病態を特徴づけているという点では重要であるが,DICの本質は臨床症状の出現ではなく,基礎疾患存在下の血管内の著しい凝固活性化状態であり,この点,DICは臨床検査により診断されるべき病態と考えられる.
DICの基礎疾患としては,急性白血病などの血液悪性疾患,固形癌,敗血症,外傷,産婦人科疾患(常位胎盤早期剥離など),膠原病に伴う血管炎など多くのものが知られているが,いずれの場合も組織因子(tissue factor;TF,かつて組織トロンボプラスチンと称されたものと同義)が重要な役割を果たしているものと考えられている.
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