増刊号 感染症検査実践マニュアル
Ⅵ.感染症とその検査法
26.ウイルス性肝炎
飯田 眞司
1
1千葉大学医学部附属病院検査部
pp.219-222
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902781
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■主要疾患と病原体
1.A型肝炎
A型肝炎ウイルス(hepatitis A virus;HAV)により感染する.HAVはピコルナウイルス科ヘパトウイルス属のRNAウイルスで直径7nmの正二十面体をしており,外殻は持っていない.HAVは酸(pH3.0)に耐性で,ペプシン・トリプシンなどの蛋白分解酵素にも耐性である.このため経口的に侵入しても胃で不活化されることなく腸管に達すると考えられているが,HAVが腸管で増殖している証拠は得られていない.
潜伏期は2〜6週間.通常HAVに汚染した飲食物を経口摂取することにより感染する.飲料水や生カキなどの貝類によるものがほとんどで流行発生,季節的発生をする.散発性急性肝炎の約20%を占める.遷延することはあるが,慢性化せず治癒するため無症候性キャリアはない.重症例,特に高齢者では腎不全を合併することがある.また,まれに劇症肝炎を起こすことがある.最近では,A型肝炎ウイルスのワクチンも発売になり,予防も可能になっている.
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