増刊号 感染症検査実践マニュアル
Ⅱ.検査目的と検査内容
3.菌叢の監視
渡辺 正治
1
1千葉大学医学部附属病院検査部
pp.28-29
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902730
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微生物検査は目的によって,感染症の起炎菌を決定するための検査,常在菌叢の監視のための検査,特定の院内感染菌の検査などに分かれる.しかし,多くの場合,検査室に臨床側から検査の目的が伝えられることはまれである.一方,検査室側も検査目的から検査の内容を変更している場合は少ない.微生物検査がより臨床に役だつためには,臨床医が何を求めて検査を依頼しているのかをはっきりと把握し,より合理的に検査を実施することが大切であり,検査室の業務の効率化と省力化にもつながる.当検査室の細菌検査申込用紙は,①起炎菌決定の用紙,②常在菌叢の監視の用紙,③特定菌検出の用紙,の3種に分かれている.その依頼頻度を表1に示した.ここでは,常在菌叢の監視を目的とした検査について述べる.
近年,感染に対する抵抗力の低下した患者が病院内に増加し,これら易感染要因を持つ患者は感染症の発症率が高く,発症後の進行も急速なため,迅速で正確な化学療法が必要となる.現在の感染症は内因性感染が主であり,将来の感染症の起炎菌を予測するためには,常在する菌叢の情報が有用であり,この目的のために監視培養が行われる.
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