検査データを考える
血液から分離された表皮ブドウ球菌
小林 芳夫
1
1慶應義塾大学中央臨床検査部
pp.459-462
発行日 1996年5月1日
Published Date 1996/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902691
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)による感染症が医師・看護婦・検査技師などの医療従事者のみならず社会的に広く関心を持たれてすでに10年以上を経過した1).これに伴い,同じStaphylococcus属である表皮ブドウ球菌すなわちStaphylococcus epidermidis(S. epidermidis)に代表されるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase negative Staphylococci;CNS)に対しても関心が深まってきている.この原因としてこれらCNSの多くがMRSAと同様にmecA遺伝子を所有している2,3)という遺伝子検査法の発達に伴う関心の深まりと,現実問題としての臨床材料からの分離株数の増加,という2点が挙げられる.言うまでもなく,すべてのブドウ球菌属は人と最もかかわりが深い菌属の1つであり,いわば皮膚の常在菌叢を形成しているともいえる菌属である.したがって,これら菌種が臨床材料から分離されたからといって,それは直ちに感染症の原因菌というわけではない.したがって分離株数の増加が直ちに感染症の増加を意味するものでもない.ここではさまざまな臨床検体の中でも,本来無菌であり,どのような菌種であろうがそれが検出されればなんらかの病的状態にあると通常考えるべきである.
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