けんさアラカルト
アルコールと検査値—アルコール依存症の臨床検査による診断と治療への応用
鈴木 康夫
1
1浜松医科大学精神医学教室
pp.486
発行日 1995年6月1日
Published Date 1995/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902414
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アルコール依存症を専門とする医師として,18年が過ぎた.アルコール依存症専門病院の院長を3年半務めていたが,患者の治療を“外来”で行うことをモットーにしてきた.入院させることは容易だが,退院すればまた飲酒して同じこと,それよりも「酒のある所で酒を飲まない」「酒さえ止めればいいのではない」と2,000人以上の患者やその数倍の家族に繰り返してきた.われわれのアルコール依存症の外来治療は3つの約束を基本にしている.①3か月間の断酒と外来通院(1週間に1回),②3か月間の毎朝シアナマイド(抗酒剤)を家族の前で服用すること,③毎週1回断酒会へ出席すること,そしてこの約束を1つでも守れなかったら入院とするという方法である.1か月30人ぐらいの新患があったが,大体半分の人は外来治療で成功し,3か月の通院を終えてからも,断酒が続いていた.この治療方法は入院治療に比べたら経済的であり,また患者の心理の変化を家族もリアルタイムに感じることができ,またそれに応じて家族も変化するという“良循環”が成立するのである.
でも,私や家族に隠れて飲酒した患者もあって,しかもシアナマイドを上手に水にすり替えていたから,酒を飲んでも何の反応も出現しないこともあった.私の診察室では,患者は私の正面に座り話をしてもらう.これは普通45°〜90°に座る精神科の診察とはちょっと異なる.なぜ正面がいいかというと,酒臭がすぐにわかるからである.
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