増刊号 臨床生理検査実践マニュアル画像検査を中心として
Ⅵ.重心動揺検査法
1.検査の意義
加我君 孝
1
1東京大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.296-299
発行日 1995年4月15日
Published Date 1995/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902377
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はじめに
身体のバランスは,例えば直立姿勢をとるとき,見かけ上何の問題がないように見えながら,絶えず小刻みの動揺を繰り返しつつ保たれているものである.静的な状態も動的にバランスは保たれている.バランスの維持に関する脳神経のしくみは,随意運動系と不随意運動に分けて考える.随意運動は,決断と実行の能力,すなわち前頭葉を中心とする企画,判断,持続的意志のようなコマンド系と錐体路系である.例えばこのような高次の神経系に障害のあるアルツハイマー病の患者に検査を理解させ,直立姿勢を維持させることは難しい.一方,不随意運動としては,①視性,迷路性,自己受容性の立直り反射(righting reflex),②大脳基底核,小脳,迷路,脊髄よりの筋緊張調節,③小脳の働きによる頭部,四肢,嚢幹の協同運動(coordination)が大切である1).
身体の動揺を他覚的に計測する方法は19世紀後半より,頭部動揺,重心動揺,嚢幹動揺,抗重力筋活動の記録など,多くの工夫が行われてきたが,コンピュータの発明,普及,ニューロサイエンスの発展などに応じて進歩し,現在では,パーソナルコンピュータを利用した低価格,高性能の検査機器が使用され,身近なものとなっている.
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