トピックス
ノックアウトマウス
中辻 憲夫
1
1国立遺伝学研究所
pp.230-232
発行日 1995年3月1日
Published Date 1995/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902277
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動物個体における遺伝子機能の研究を行うためには,研究対象とする遺伝子に実験的な変化を与えたときに,動物や胎仔にどんな影響が起きるのかを解析することも必要である.最近になって,このような研究手段がマウスにおいて可能になった.つまり外来遺伝子を導入して発現させるトランスジェニック動物作製法と,内在する特定の遺伝子を標的としてあらかじめデザインした改変を加える遺伝子ターゲティング法である.このうち,目的の遺伝子が壊されたマウスをノックアウトマウスと呼ぶことが多い.もともとその動物の染色体上に存在する遺伝子を標的(ターゲット)として,あらかじめ遺伝子工学技術によって用意した新しい遺伝子に置き換えることができるので,その内在遺伝子を壊すことはもちろん,その遺伝子の一部分を思うままに取り換えることもできるという,夢のような方法である.つまり,これまでは自然発生する突然変異を長い時間をかけて選別していたものを,研究や開発の目的に合うようにマウスの遺伝子を改変することができ,そのように改変した(改良した)動物の系統や品種を作り出すことができるようになった.これを可能にしたのは,胚幹細胞と呼ばれる特殊な細胞株を使った発生工学技術と,遺伝子工学による相同遺伝子組換え技術である.
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