トピックス
新型コレラ菌O139 Bengalとその流行
竹田 美文
1
1国立国際医療センター研究所
pp.1108-1110
発行日 1994年12月1日
Published Date 1994/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902205
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コレラ菌(Vibrio cholerae)は,O抗原の違いによって,138種類以上の血清型に分けられている1).このうち,コレラの原因となるのは,O1血清型に属するコレラ菌(V. cholerae O1)で,しかもコレラ毒素を産生する菌である.一方,O2〜O138の血清型に属する菌は,まれにコレラ毒素を産生する菌もあるが,一括してnon-O1コレラ菌と呼び,コレラの原因菌とは考えられていなかった.わが国では食中毒の原因菌として扱われている.
ところが,1992年10月,インド南部のマドラスで,non-O1コレラ菌によるコレラ様下痢の大流行が発生した2).同じようなnon-O1コレラ菌による下痢の流行が,ほぼ同時にバングラデシュ南部でも確認された3).どちらの流行の原因菌も,O1血清型に属さないばかりでなく,既知のO2〜O138のどの血清型にも属さず,しかもすべてがコレラ毒素産生菌であった.Shimadaら4)は,このnon-O1菌をO139 Bengal型(ベンガル型コレラ菌)と名づけた.ベンガル型と名づけたのは,流行が発生したのがベンガル湾沿いであったためである.
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