連載 病原微生物・見方をかえたら・2
コレラ菌
益田 昭吾
1
1東京慈恵会医科大学
pp.395
発行日 1996年5月25日
Published Date 1996/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901378
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コレラは,コレラ菌によって汚染されている水や食物を摂取した際に起こる消化器伝染病です.この病気の特徴的な症状は激しい下痢で,コレラ菌が作るコレラ毒素というタンパクによって生じることが分かっています.
コレラ菌に似ている仲間の菌は,自然界に多く存在し,その多くは海にいます.海水と同じくらいの食塩濃度がないと人工培養しにくいことは,コレラ菌がもともと海水の中に住んでいたことを想像させます.ある時,コレラ菌の先祖が毒素遺伝子を獲得して(どこからあるいはどうやってかは全くわかりませんが)コレラという病気を起こすようになったわけです.海水や淡水と下痢の便とでは栄養価が全然違いますから,コレラ菌は,コレラという病気を起こせた場合,下痢便の栄養を利用して海水中よりも,はるかに大規模に増殖できるでしょう.
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