増刊号 免疫検査実践マニュアル
各論
Ⅶ.凝固
5.プラスミノゲン,α2PI,PIC
香川 和彦
1
,
福武 勝幸
1
1東京医科大学臨床病理学教室
pp.245-248
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901957
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■線溶系の理解と検査目的
図1に線溶系の概略を示した.プラスミンの前駆物質であるプラスミノゲンは肝実質細胞で産生されるセリンプロテアーゼで,血栓の主蛋白であるフィブリンに,血管内皮細胞などから放出されるプラスミノゲンアクチベーター(PA)ととも直接結合する.フィブリンという固相上での局所濃縮が行われ,効率よくプラスミノゲンはプラスミンに活性化され線溶系が始動する.プラスミンはフィブリンを分解しDダイマーを含むフィブリン分解産物(FDP)が生成される.これは従来より二次線溶と表現されている.フィブリンが形成されていない液相中でプラスミノゲンが活性化される場合には一次線溶といわれるが,手術や悪性腫瘍などによる内因性組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA)の大量放出やtPA,ウロキナーゼ(UK)の大量投与など特殊な場合に限られる.多くの症例では二次線溶と一次線溶が混在し,一次線溶のみが亢進する病態に遭遇することはまれである.
α2プラスミンインヒビター(α2PI)も肝実質細胞で産生され,セリンプロテアーゼインヒビターに属する糖蛋白である.α2PIはプラスミンと1:1の分子結合によりα2PIプラスミン複合体(PIC)を形成してプラスミンを失活させ,またプラスミノゲンとの結合によりプラスミノゲンのフィブリンへの結合を阻害したり,活性化XⅢ因子を介してフィブリンに結合することにより線溶系を制御している1,2).
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