増大号 匠から学ぶ 血栓止血検査ガイド
3章 検査プロセス
PIC/プラスミノゲン/t-PA・PAI-1複合体/α2PI/PAI-1
長屋 聡美
1
,
森下 英理子
1
1金沢大学大学院医薬保健学総合研究科病態検査学
キーワード:
線溶
,
プラスミン
,
PIC
,
PAI-1
Keyword:
線溶
,
プラスミン
,
PIC
,
PAI-1
pp.993-996
発行日 2023年9月1日
Published Date 2023/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543209096
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はじめに
線維素溶解(線溶)とは,凝固カスケードの進行に伴って生じた不溶性のフィブリン(線維素)を可溶性のフィブリン分解産物に分解し,組織傷害などで生じた止血血栓を溶解・除去する機構である.線溶反応は,プラスミノゲンアクチベータ(plasminogen activator:PA)が,酵素前駆体であるプラスミノゲンのArg561-Val562ペプチド結合を加水分解し,プラスミンに転換することで始まる1).生理的なPAとしては,組織型PA(tissue-type PA:t-PA)とウロキナーゼ型PA(urokinase-type PA:u-PA)の2種類が存在しているが,血管内皮細胞で産生されて血管内線溶にかかわるのは,主にt-PAである2).生成されたプラスミンはフィブリンを分解し,フィブリン/フィブリノゲン分解産物(fibrin/fibrinogen degradation products:FDP)やDダイマーを生じる(図1).t-PAおよびプラスミノゲンはフィブリン親和性が高いため,フィブリン上におけるプラスミン生成とフィブリン溶解が効率よく進行する2,3).
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