検査ファイル
僧帽弁DDR
吉田 清
1
1神戸市立中央市民病院循環器センター内科
pp.935
発行日 1993年10月1日
Published Date 1993/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901708
- 有料閲覧
- 文献概要
僧帽弁拡張期後退速度(distolic descent rate;DDR,図1)は急速流入期に僧帽弁口が閉鎖していく速度である.DDRの正常値は80〜160mm/秒である.僧帽弁が拡張早期に閉鎖するメカニズムについては流出路での渦流(反転流)が関与しているとされている.すなわち,僧帽弁が開放したのち,左室流入血流の一部が左室流出路に向かい反転して僧帽弁を閉鎖させるように作用するというものである.この反転流の強さは左室流入血流に関係するので,DDRは左室流入血流の量と速度によって影響を受ける.
当初はこの指標は僧帽弁狭窄における弁口面積を評価する指標として極めて重要視された.事実,僧帽弁口面積が縮小すればDDRは低下する(図2).しかしながら,上述したごとく,DDRは僧帽弁口面積のみならず他の因子,例えば,左室コンプライアンス,心拍出量,心拍数などに大きく影響を受けることが知られている.また,石灰化が強く,弁の可動性が減少している例では,僧帽弁DDRから予測されるよりも僧帽弁口面積が大きいことも指摘されている.さらに,測定部位により値が異なることがあり注意が必要である.例えば,後交連部付近に局在性病変が存在すればこの部位でのDDRは低下することになる.したがって,断層法やドプラ法が発達した現在では僧帽弁口面積の計測法としての重要性は少なくなっている.
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.