増刊号 臨床化学実践マニュアル
II.日常検査における異常値への対応
7.ホルモン成分
ホルモン成分
内村 英正
1
1東京大学医学部臨床検査医学
pp.152-157
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901521
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はじめに
ホルモン検査における異常値を理解するためには,まず生体がホメオスターシス(homeostasis)を保つために,個々の内分泌器官の調節機序に他の器官も関係していることを知っておく必要がある.さらに,測定法についてもある程度理解していなければならない.例えば甲状腺の調節機序について例を挙げると,図1に示すごとく視床下部からの甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH),ソマトスタチンにより刺激性または抑制性の制御を受けている下垂体は甲状腺刺激ホルモン(TSH)を分泌するが,このTSH産生細胞の機能は甲状腺ホルモン(T3,T4)により抑制を受ける.また,上位のTRHの分泌もT3,T4に抑制される.したがってある患者のT3,T4,TSHを測定した際に,いずれもが正常値以上の値を示した場合には,検体取り扱い上の手続きに間違いがなければ,測定法に問題があるか,新しい病態が考えられることになる.
内分泌の病気の検査は,①血中,尿中のホルモンまたはその代謝産物を測定して正常値に比較して増加しているか減少しているかを調べる,②測定値の異常の原因を明らかにするための画像診断を行う.
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