トピックス
ニューキノロン剤耐性赤痢菌
堀内 三吉
1
,
稲垣 好雄
1
1東京医科歯科大学医学部微生物学教室
pp.539-540
発行日 1992年6月1日
Published Date 1992/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901198
- 有料閲覧
- 文献概要
1.薬剤耐性赤痢菌
わが国では,細菌性赤痢は化学療法剤の使用に伴って1960年代以降減少した.しかし,腸チフスなどの法定伝染病に比べると患者発症率はいまだに高く,年間1,000〜1,500人が赤痢に罹患している1).このうちの過半数は輸入感染例で,東南アジアからのものがほとんどを占めている.化学療法剤は赤痢の治療薬として社会に大きく貢献したが,しかし,その使用量の増加とともに薬剤耐性菌が出現して新たな問題を提起した.1959年にはRプラスミド(薬剤耐性因子)が世界に先駆けわが国で赤痢菌から発見され,1970年代になるとほとんどの赤痢菌はRプラスミドを保有し多剤耐性菌となった.
1962年に最初のキノロン系薬剤であるナリジクス酸(NA)が発見され赤痢の治療薬として用いられるようになり,ことに東南アジア諸国において多用された.その後キノロンの骨格にフッ素を導入すると,薬剤の菊体膜透過性が向上し,抗菌スペクトルも拡大するとともに抗菌力も一段と強くなることが明らかとなり,1985年以降新しいタイプの抗菌剤が開発され,ノルフロキサシン(NFLX),オフロキサシン(OFLX),シプロフロキサシン(CPFX),スパルフロキサシン(SPFX)などが発表され,多くの感染症の治療に用いられるようになった.
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.