今月の主題 性感染症(STD)
話題
ニューキノロン薬耐性リン菌
小野寺 昭一
1
Shoichi ONODERA
1
1東京慈恵会医科大学泌尿器科
キーワード:
尿道炎
,
ニューキノロン薬耐性リン菌
,
耐性機構の解析
Keyword:
尿道炎
,
ニューキノロン薬耐性リン菌
,
耐性機構の解析
pp.720-722
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902950
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1.はじめに
ニューキノロン薬は従来,リン菌に対してきわめて優れた抗菌力を示し,その治療効果も100%に近いものであった1).特に,ニューキノロン薬がわが国において初めて臨床に供されたころは,ペニシリン耐性リン菌(penicillinase-producingNeisseria gonorrhoeae;PPNG)の蔓延が世界的にも,わが国においても重要な問題となっていた.しかし,ペニシリンに対して交差耐性を示さないニューキノロン薬はPPNG,non-PPNGを問わず優れた治療効果を示し,1回につき400~600mgの単回経口投与によっても十分な効果が得られていた1).さらに,ニューキノロン薬の中には尿道炎の原因微生物として重要なChlamydiatrachomatisにも優れた抗菌力を示すものがいくつかあり,わが国においてニューキノロン薬は,尿道炎に対し最も使用頻度の高い抗菌薬となっている.
しかし,筆者らの関連施設である都立台東病院においては,ニューキノロン薬が臨床において使用され始めた1984年から4年間を経た1988年には,すでにニューキノロン薬による治療によって消失しないリン菌が出現しており,特に,1991年以後は6~12%に本系統の薬剤による治療の不成功例がみられている2)(図1).
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