増刊号 尿検査法
II.各論
15.中毒性薬物
(1)エタノール,メタノール
塚本 昭次郎
1
1日本大学医学部法医学教室
pp.154-155
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901102
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エタノール(ethanol;分子量46,液体,沸点78.5℃,比重0.789),メタノール(methano1;分子量32,液体,沸点64.7℃,比重0.790)が尿中に出現するのは,これらを経口的に摂取したときである.エタノールでは主として飲酒したときであり1),メタノールでは誤飲したか自殺目的に用いたときである2).また産業衛生上,アルコール類の曝露によっても排泄される.正常者の尿中のアルコール類はいずれも微量で,尿1ml中0.5〜5μg程度である3).
エタノール・メタノールは,それ自身脳の働きを抑制する,いわゆる酩酊状態を起こす物質である.生体内で代謝されることによってその代謝物が毒性を示すことになる.特にメタノール中毒では代謝物のホルムアルデヒド,ギ酸塩の共存により,頭痛,嘔吐,悪心,チアノーゼ,アシドーシスを起こす.この中毒の特徴である視力障害を起こして失明し,また死亡した例も多い.エタノール・メタノールのヒトの致死量はそれぞれ3〜6ml/kg,1〜2ml/kgである.
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