病気のはなし
ライム病
川端 眞人
1
1日本大学医学部臨床病理学教室
pp.194-199
発行日 1992年3月1日
Published Date 1992/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900970
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サマリー
ライム病はマダニによって媒介されるBorrelia burgdorferiによる全身性感染症である.マダニ咬傷を介して皮膚に侵入したボレリアは遠心性に拡大する遊走性紅斑を形成する(第I期),その後,血行性に拡散し,関節炎,髄膜炎,脳神経障害,神経根炎,循環器障害,虹彩炎などの病変を生じ(第II期),関節炎,神経症状などは慢性化する(第III期).多彩な臨床経過をとり,マダニ咬傷と遊走性紅斑以外に特異的な所見はなく,診断が困難な症例が多い.そのため血清診断が開発されているが,その特性と限界を理解して解釈する必要がある.ボレリアはペニシリンなど抗生剤に感受性があり,感染早期の治療は有効である.
本症が初めて報告されたのは1970年代,病原体が分離されたのは1980年代と新しく確認された感染症である.日本では1987年に最初の症例が報告された.これまでの調査では流行地は北海道から本州の中部以北で,媒介マダニはシュルツェマダニと推測される.流行地の南限,日本でのライム病の臨床像など今後明らかにする必要がある.
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