今月の主題 人畜共通感染症
病態と技術解説
ライム病
川端 眞人
1
Masato KAWABATA
1
1神戸大学医学部医学研究国際交流センター
キーワード:
マダニ刺咬傷
,
遊走性紅斑
,
Borrelia burgdorferi
Keyword:
マダニ刺咬傷
,
遊走性紅斑
,
Borrelia burgdorferi
pp.1013-1019
発行日 1995年9月15日
Published Date 1995/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902590
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ライム病は野山に生息するマダニによって媒介されるボレリア感染症で,ヨーロッパ諸国,アメリカ合衆国(米国),そして日本を含む東アジアに流行する.病原体ボレリアはBorrelia burgdorferiで,患者の病変部,血液,媒介マダニの中腸から分離される.典型的な症状は感染早期にマダニ刺咬傷部に一致して出現する遊走性紅斑であるが,感染の経過に伴い病原体ボレリアは拡散し全身性の多彩な症状を呈する.感染早期は抗生物質によく反応するが,一部の慢性期症状は進行性で治療に抵抗する.臨床経過は流行地による地域差があり,地域ごとのボレリア病原性の違いに由来すると考えられる.現在,ヨーロッパでは病原体ボレリアであるB.burgdorferiは3種に分けられ,そのうちの1種が米国に存在する.ヨーロッパでは神経系や皮膚の症状が多彩であるのに対し,米国では関節症状が主体である.日本の主要ライム病原体はヨーロッパ種とは異なり,病原性が穏やかな固有の種であると推定される.マダニ媒介感染症は地球環境の変貌に伴い,流行地の動向に注意が必要である.〔臨床検査 39:1013-1019,1995〕
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