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心筋症と遺伝子異常
小澤 高将
1
1名古屋大学医学部第2生化学
pp.84-86
発行日 1992年1月1日
Published Date 1992/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900937
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分子生物学の進歩により,遺伝子異常と疾患との関係が注目されている.心筋症でも核DNAの変異が報告されている1).
細胞のエネルギー供給はほとんどミトコンドリアによって行われている.すなわち,ミトコンドリアは食事から得られたブドウ糖,脂肪を分解して得られる水素を酸素と反応させ,この過程で得られるエネルギーを利用してアデノシン3リン酸(ATP)を産生している.エネルギー産生系は電子を酸素に渡して水に変えて,エネルギーを取り出す電子伝達系(複合体Ⅰ〜Ⅳ)とそのエネルギーによってATPを合成するATPase(複合体Ⅴ)から成り立っている.それぞれの複合体は,数個〜十数個のサブユニットから構成されている.ミトコンドリアは他の細胞内小器官と異なり,DNAを持っている.1つの細胞は一組の核DNAしか持たないが,1つのミトコンドリアは2,3個の環状二重鎖DNAを保有している.この環状DNAに,全体で約60個あるミトコンドリアエネルギー産生系のサブユニットのうち13個の遺伝情報が納められている(図).残りのサブユニットの情報は核DNAに遺伝子転移されている.ヒトミトコンドリアDNAは1981年にその全塩基配列が決定されている2).
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