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ヒトT細胞白血病ウイルスの電顕観察
大朏 祐治
1
1高知医科大学第二病理学
pp.1178-1180
発行日 1991年12月1日
Published Date 1991/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900907
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現在までに,ヒト腫瘍との因果関係が明らかにされている,あるいは明らかにされつつあるウイルスとしては,成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia;ATL)におけるヒトT細胞白血病ウイルス(human T-lymphotropic virus type Ⅰ;HTLV-Ⅰ),肝癌とB型・C型肝炎ウイルス,バーキットリンパ腫のEpstein-Barrウイルス,子宮頸癌におけるヒト乳頭腫ウイルスの4つが挙げられる.本稿では,ATLを惹起するHTLV-Ⅰの微細構造について現在までに得られている知見について述べる.
HTLV-Ⅰは1980年米国1)と日本2)で相前後して発見されたヒト由来のRNA型ウイルスで,前者は菌状息肉症(mycosis fungoides),後者はATLから分離されたものであり,両者は形態的にも免疫学的にも,分子生物学的にも同一のものとされ,現在では,HTLV-Ⅰと呼称されている.従来,マウス・ラット・モルモット・ネコ・ブタ・サルなどさまざまな動物由来の白血病ウイルスが知られていたが,これらはいずれもC型ウイルス粒子と呼ばれるウイルス被膜と中心の核様体を有する基本型を示している.HTLV-Ⅰが重要な意味を持つのは,形態的にはこれら動物由来のC型粒子に属するものであったからである.
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