検査ファイル
用語●カットオフ値
大倉 久直
1
1国立がんセンター病院内科,臨床検査部がん反応検査室
pp.963-965
発行日 1991年10月1日
Published Date 1991/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900844
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[1]カットオフ値とは
臨床検査におけるカットオフ値とは,2つのグループ(通常は正常人と特定疾患群)を識別する目的で定めた,境界値または〔しきい(=閾)値〕のことをいい,個々の検査について,診断の明らかな多数のデータを元にして決められる.
しかし,このしきい値は,分けようとする両グループの性格と,2群に分けることの背後にある「真の目的」によってさまざまに定められるので,常に正常値の境界を意味するわけではない.例えば,良性肝疾患と肝細胞癌を区別するには,AFPのカットオフ値を正常上界値の20ng/mlではなく,200ng/mlまたは400ng/mlに定めるほうが妥当とされている.しかし,カットオフ値をどのように決めても,少なからぬ例外ができるのが普通である.AFPの例では,400ng/mlを超える良性肝疾患も,またこれより低い値の肝細胞癌も多数あって,これらはそれぞれ偽陽性,偽陰性と呼ばれる.言い換えると,カットオフ値とは,ある範囲に一部重なり合って分布している2群を分別するために,最も適当と考えられる一点に恣意的に設定されるものだが,その設定目的と数理的根拠はさまざまで,絶対的なものではない.
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