今月の表紙
骨髄間質の立体再構築像
渡辺 陽之輔
1
,
山崎 一人
2
,
榎本 康弘
2
1慶応義塾大学
2慶応義塾大学大学医学部病理学教室
pp.344
発行日 1991年4月1日
Published Date 1991/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900572
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骨髄を光顕で見ると,いろいろな成熟段階にある血液細胞(造血細胞)で充満しており,その中に大きな静脈(静脈洞)が流れている.東京や大阪の下町の航空写真で,密集した民家の中を枝分かれした墨田川や淀川が悠々と流れているような風景である.もう少し倍率を上げると,密集した造血細胞の中に樹枝上の突起を出した細胞(細網細胞)が散在していて,ちょうど町中を走る道路のように民家(造血細胞)を小さなブロックに分けているように見える.普通の光顕や電顕では平面的な映像しか得られないので,このように航空写真的な像になってしまうが,これらの構造物は実際に骨髄の中では立体的に広がっている.
造血細胞の集団(造血実質)の中では各種の血液細胞が造られ,成熟して,最終的に静脈洞の壁を通過して血液中に流れ出す.上述の川や道路に相当する部分はひっくるめて骨髄間質と呼ばれている.以前は骨髄間質の機能は単に造血実質の支持だけと考えられていたが,最近,間質の細胞が積極的に造血をコントロールすることがわかってきて,その立体構造の解明が急がれるようになった.
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