明日の検査技師に望む
対立から協調へ
丹羽 正治
1
1東海大学医学部臨床病理
pp.130
発行日 1991年2月1日
Published Date 1991/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900516
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取り囲む光と陰
すでによくご存じのように,最近の臨床検査の発展はまさに日進月歩で,それが年々と加速されている.この実態は関係学会,講習会,展示や出版物などに反映され,また臨床検査の主要な活動分野である医療の場にも現れ,検査に対する臨床側の需要はますます高度化,多様化されている.さらに検査の対象分野も拡大され,保健・産業医学などの方面にも及んでいる.これらから判断すると,臨床検査の前途は洋々としており,それらの多彩な分野の発展には各種の検査から得られた,鋭敏で客観性,定量性のあるデータが不可欠な要素となっていると理解できる.
このように臨床検査自体を囲む一般情勢は明るいが,最近,心ある検査技師から,前途に対する危機感を訴えられることがあり,確かにそれは,検査に関係する者が一緒になって乗り越えるべき当面の重大問題と筆者も受け止めている.具体的には,最近の検査技術,特にその自動化の急速な発展で使用機器はいつかブラックボックス化され,それを使っている間にいつか主体性が奪われ,技師としての仕事の楽しみや自信がしだいに喪失され,また現実的な問題として,医療費抑制の流れの下で採算性が追求され,その発想の下で検体検査の外注化がすでに実施され,その傾向がますます増強されることへの不安である.
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