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癌のターゲット療法
水島 裕
1
1聖マリアンナ・医大第一内科
pp.259-260
発行日 1990年3月1日
Published Date 1990/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900077
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ターゲット療法とは,いうまでもなく病巣部位に薬物を集中させる療法で,最近進歩の著しいdrug delivery system(DDS)の代表である.少なくとも初期は,癌は局所的病変であり,しかも抗癌剤が通常,生体細胞にも悪影響を及ぼすため,癌はターゲット療法の最大のターゲットとなっている.すでに前世期,Ehrlichがこのような発想を打ち出し,癌に特定するわけではないが,抗体と毒素を結合させ,病巣にミサイル攻撃をしかけるねらいを提唱している.
ここで癌のターゲット療法の戦略を考えてみよう.まず第一が,癌細胞に対してである.癌抗原に対するモノクローナル抗体,またはモノクローナル抗体に薬物を直接,また担体を介してつける方法である.次は癌に存在しているレセプターを使用する方法であり,すでに女性ホルモンなどで実用化されている.また癌細胞にある,なんらかの特異的物質に対する親和性物質を使用することも今後考えられよう.一方,癌細胞に比較的特異な代謝を利用し,プロドラッグを用いる方法もある.現在実用化されているのがFDURであり,癌細胞中で活性化され効果を示すので,主として癌細胞だけに毒性を持つことになる.最近,多剤耐性癌のメカニズムとして癌細胞膜に存在するG糖蛋白が重要と考えられている.この作用は一部,カルシウム拮抗剤で抑制できるし,また最近の研究では抗G糖蛋白抗体の使用で多剤耐性が解消することが挙げられている.
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