- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
ワンヘルスとして取り組む薬剤耐性菌の課題
さまざまな抗菌薬に耐性を示す(高度)薬剤耐性菌の出現と増加は,臨床のみならず家畜・野生動物の衛生環境にも大きな懸念材料となっている.抗菌薬は農作物を害する病原菌の予防・駆除にも利用され,ヒトを含む哺乳動物類の治療・予防にとどまらず,環境全体へ循環して薬剤耐性菌の拡散と影響も配慮すべき時代となっている1).人・動物・環境の健康は相互に関連しており,地球規模の健康をうたう“ワンヘルス(One Health)”の概念が生まれている.薬剤耐性菌により治療が困難にならないよう,それぞれの産業分野で抗菌薬の適正使用が図られ,持続可能な社会を目指している.その参考例として,以下が挙げられる.
・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)治療薬バンコマイシンと類似構造を有すアボパルシンの養鶏飼料添加物の指定取り消し(平成9年農林水産省令第11号)→MRSA治療の安心を確保.
・多剤耐性グラム陰性菌治療薬として処方されるコリスチンの家畜飼料添加物の指定取り消し(平成30年7月,平成29年消安第4994号)→グラム陰性菌治療の安心を確保.
・国内養鶏産業における抗菌薬セフチオフル(第3世代セファロスポリン)の自主的使用中止によりサルモネラ菌の耐性率が激減2)→サルモネラ食中毒における治療薬の確保.
・臨床における抗菌薬適正使用の推進とガイドライン3)→起因菌に効果的な抗菌薬を使用すること,無効の抗菌薬による選択圧で耐性菌を増やさない努力,耐性頻度を低下させ,既存の抗菌薬が有効に作用することを期待.
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.