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はじめに
凝固・線溶検査は,未消費の凝固・線溶関連因子を総体または個別に評価するものと,凝固・線溶関連因子が体内で消費された痕跡を評価するものに大別される(図1).前者はプロトロンビン時間(prothrombin time:PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT),フィブリノゲン,第XIII因子(FXIII)活性,アンチトロンビン活性,その他の各種凝固・線溶因子活性,抗凝固・線溶因子活性が挙げられる.後者はトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT),可溶性フィブリンモノマー複合体,プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(plasmin-α2 antiplasmin inhibitor complex:PIC),フィブリン/フィブリノゲン分解産物(fibrin/fibrinogen degradation products:FDP),Dダイマーが挙げられる.
凝固・線溶関連因子が体内で消費された痕跡の評価はマーカー分子の抗原量の測定に基づくのに対して,未消費の凝固・線溶関連因子を総体または個別に評価する検査は主に活性を対象とし,凝固時間法または合成基質法で実施される.凝固と線溶はそれぞれ活性化凝固因子,活性化線溶因子による酵素反応のカスケードで成立し,トランスグルタミナーゼである活性化FXIII(FXIIIa)を除けばいずれもセリンプロテアーゼ反応である.PT,APTT,フィブリノゲンその他の凝固因子(FXIIIを除く)の測定に用いられる凝固時間法およびFXIII活性,アンチトロンビン活性などの測定に用いられる合成基質法はいずれも試験管内で惹起される因子の酵素反応を利用する.前者はカスケードの最終生成物であるフィブリンの析出が検出されるまでの時間を,後者はカスケードの下流で生じる活性化凝固因子による合成基質からの生成物を,それぞれ測定する.
PTとAPTTは代表的な凝固スクリーニング検査であり,生体内でまだ消費されていない凝固因子(FXIIIを除く)の活性を総体として評価する検査である.PTは外因系凝固能を総合的に評価する.因子活性欠乏または因子インヒビターによる外因系凝固異常の検索,ワルファリン療法のモニタリングに用いられる.
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