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はじめに
社会の超高齢化に伴い,認知症の人は急増している.わが国では高齢者の15%以上が認知症を有するものと考えられる.認知症の原因にはアルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD),血管性認知症,レビー小体型認知症,前頭側頭型認知症など,さまざまな疾患があるが,ADが約3分の2を占める.
ADをはじめとする認知症疾患の確定診断は,脳の病理学的所見による.最近のバイオマーカーの進歩により,生検や剖検により脳を直接見ることなく,脳病理を推定できるようになってきた.それらには画像バイオマーカーと体液バイオマーカーが含まれる.画像バイオマーカーでは脳病理をイメージングする陽電子放出断層撮影(positron emission tomography:PET)が,体液バイオマーカーでは脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)バイオマーカーが臨床応用され,さらに,血液バイオマーカーの開発が進んでいる.
ADの脳病理は,アミロイドβタンパク質(amyloid β protein:Aβ,老人斑)および異常リン酸化タウタンパク質(phosphorylated tau:p-tau)の蓄積(神経原線維変化,他)を特徴とする(図1).ADの病変形成過程(仮説)と,それを検出する画像検査やCSF検査を図2に示す.
これまで認知症は臨床症状を軸に理解され診断されてきたが,バイオマーカーに基づき病態・病理を診断し,それを標的とした治療〔疾患修飾療法(disease-modifying therapy:DMT)〕へと結びつけていく時代が始まった.本稿ではADに焦点を当て,CSF・血液バイオマーカーについて概説する.
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