臨床医からの質問に答える
アメーバ性虫垂炎の診断のポイントを教えてください.
渡辺 恒二
1
1国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター
pp.628-631
発行日 2022年6月1日
Published Date 2022/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543208714
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赤痢アメーバ症とアメーバ性虫垂炎
赤痢アメーバ症は,赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)による感染症(腸管寄生虫症)である.赤痢アメーバは,体外環境中でも長期間安定しているシスト(囊子)型と,ヒトの体内で大腸組織を破壊する栄養型の2つの形態を有する.外部環境もしくは他の感染者から直接的に,シスト型赤痢アメーバを経口的に摂取することにより感染伝播が起こる.経口摂取されたシスト型赤痢アメーバは,胃や小腸などの強酸または強アルカリの環境を通過し,大腸に達すると栄養型赤痢アメーバに脱嚢する.栄養型赤痢アメーバの表面にある接着因子(レクチン)を介して,ヒトの大腸粘膜表面のムチンに接着することで感染が成立する.
大腸に感染を起こした栄養型赤痢アメーバは粘膜下組織に侵入し,下痢や血便などの腸炎(アメーバ性腸炎),血管への浸潤が起こると血流を介して肝膿瘍(アメーバ性肝膿瘍)などの病気を引き起こす.アメーバ性腸炎やアメーバ性肝膿瘍など,赤痢アメーバによる侵襲性感染症をアメーバ赤痢と呼ぶ(図1).
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