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はじめに
世界保健機関(World Health Organization:WHO)では,1987年の総会において臓器移植のガイドライン制定を実施することが決議され,1991年に「移植ガイドライン」が制定された.この決議を受けて,1990年代後半には多くの国々で臓器移植のための法律が制定され,実際に臓器移植が実施されてきた.
わが国における2019年の全臓器移植件数は2,680件,そのうち腎臓移植が2,057件,肝臓移植が395件である1).腎移植の2,057件のうち,生体腎移植が1,827件(88.8%)と大部分を占めている.最近では親子間より夫婦間での腎移植が多くなってきており,また生体腎移植全体としては血液型不適合移植が増加している.肝移植に関しては,2019年末までに実施された件数は成人・小児を合わせて10,038例あり,年間で約400例程度の肝移植が実施されている.移植には拒絶反応のコントロールが必須であり,そのためにさまざまな種類の免疫抑制剤を組み合わせて免疫抑制療法が実施されている.
臨床検査の過程には,検査前プロセス・検査プロセス・検査後プロセスの3過程があり,これらを遵守することで臨床検査の品質を保証している.検査前プロセスとは,検査に提供される前の検体の採取や搬送などの過程のことである.検体検査では,例えば採血管の不一致,検体凝固,輸液混入,検体放置などがこの過程のトラブルに該当し,検査結果の誤った解釈につながる.信頼できる検査結果を得るために,検査室は検査前プロセスを厳重に管理し,適切な状態で検査を行うことが非常に重要である.
本稿では免疫抑制剤,主にタクロリムスについてと血中薬物濃度測定における検査前プロセスの重要性について紹介する.
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