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キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(CAR-T細胞)療法の概要
2012年に米国のフィラデルフィア小児病院で,2回の治療中再発をきたした小児急性リンパ芽球性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)の患者にCD19を標的としたキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)遺伝子導入T細胞(CAR-T細胞)療法が施行され,その後長期にわたって寛解を維持したことが報道されて以降,血液腫瘍に対する“CAR-T細胞療法”は一気に世界の注目を集めた.
CAR-T細胞療法は,遺伝子改変した人工T細胞を体外で大量に作製し患者に輸注する,遺伝子改変T細胞輸注療法である.CARとは,T細胞受容体(T cell receptor:TCR)の細胞内ドメインと抗体の抗原結合部位を遺伝子組み換え技術によって結合させた受容体で(図1),これをT細胞に導入したものをCAR-T細胞と呼ぶ.CAR-T細胞は癌細胞上の抗原を認識後,共刺激シグナルを介して標的癌細胞を活性化しアポトーシスを誘導する.一部はメモリーT細胞へと分化し,体内に長時間残存し,持続的な抗腫瘍効果を発揮する.つまり,CAR-T細胞療法は,現在の悪性腫瘍に対する免疫療法の主流である,抗体療法と細胞傷害性T細胞(cytotoxic T cell:CTL)による治療を組み合わせた治療といえる.抗体療法では反復投与が必要となるが,CAR-T細胞は体内で増殖できるため,持続的効果を期待できる.標的分子の認識がヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)に依存しないため,HLAの発現低下により免疫機構から逃れている腫瘍細胞に対しても有効である.
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