臨床検査のピットフォール
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体の適切な作製・保管方法の留意点
佐藤 浩司
1
1名古屋大学医学部附属病院病理部
pp.604-607
発行日 2020年6月1日
Published Date 2020/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543208023
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はじめに
ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded:FFPE)検体とは,文字通りホルマリンで固定した検体を脱水脱脂後パラフィンへと置換し包埋処理をした検体のことで,病理診断を目的とした検査室で最も広く用いられている処理方法である.
このFFPE検体は,薄切後のヘマトキシリン・エオジン(hematoxylin-eosin:HE)染色や特殊染色を用いて形態学を基にした従来の病理診断,また免疫組織化学染色(免疫染色)やFISH(fluorescence in situ hybridization)法などを用いた分子病理診断に使用されてきた.近年ではその利用目的がさらに広がり,コンパニオン診断を目的とした免疫染色やFISH法,遺伝子変異解析など多岐にわたって使用されるようになった.特にこのコンパニオン診断における治療標的分子の検索は,固定からパラフィン包埋までのプロセスやブロックの保管方法において,適切な条件で処理することが求められる.すなわちこのFFPE検体の作製プロセスや保管方法について誤った処理が加わると,その後の分子レベルでの正確な診断や治療において重大な問題を引き起こし,患者自身のQOL(quality of life)に大きな支障が生じてしまう.したがって,本稿ではFFPE検体の適切な作製・保管の際の留意点について解説する.
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