増刊号 採血のすべて—手技から採血室の運用まで徹底解説
Ⅴ 採血室の運営と工夫
監視カメラを利用した採血室管理
市村 直也
1
1東京医科歯科大学医学部附属病院検査部
pp.354-358
発行日 2020年3月15日
Published Date 2020/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207934
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はじめに
監視カメラの導入背景
採血は多くの患者に日常的に行われる侵襲的な医療行為である.そのため,穿刺の痛みや合併症に加え,採血失敗や接遇に対して患者の不満が生じやすいプロセスである.こうした不満は時として苦情として寄せられることがあるが,事実関係を確認する場合に担当者の記憶に頼らざるを得ず,時として患者の主張と食い違う場合がある.特に採血に起因する末梢神経損傷を疑う症例では,穿刺直後の電撃痛の確認の有無や,穿刺箇所と症状の出現範囲が一致していることなどを正確に把握することが,その後の対応にとって極めて重要となる.また,こうした症状の訴えが採血後しばらくしてから患者から申し出られることがあり,患者とスタッフ双方の記憶が時間の経過によってさらに曖昧となって,事実関係の確認が困難になる場合がある.
採血におけるこうした背景から,われわれは医療安全の確保を目的として,採血の状況を全て監視カメラで録画するシステムを構築した.本稿では,システムの構成ならびに記録した録画データをトラブル対応やスタッフの技量確認など採血室の管理に利用している東京医科歯科大学医学部附属病院(以下,当院)の取り組みについて紹介する.また,録画データの2次利用について今後期待することを述べる.
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