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はじめに
睡眠検査をどう捉えるか?というのは“睡眠医学”をどう考えるかということに直結します.睡眠医学にとって,睡眠検査こそが“睡眠を観察する”ことができる手段であり,その目的のために睡眠検査は発展してきたからです.睡眠医学にとっての睡眠検査,特に終夜睡眠ポリグラフ(polysomnography:PSG)検査の発展の歴史は睡眠医学の発展の歴史そのものと言っても過言ではありません.そして,それに従事している臨床検査技師は,他の職種よりもヒトの睡眠をリアルタイムで見る面白さに触れるチャンスがあるともいえます.現在ではいろいろな分野出身の医療従事者が睡眠医学にかかわっていますが,睡眠医学の魅力の原点は“睡眠を観察すること”であって,そこから睡眠医学への興味をもつようになって参入するというのは,まさに“正統な”ルートであるといえます.逆に言うと,睡眠医学に少しでも興味をもったら睡眠検査を経験することは必須といえます.
残念ながら,現在の日本では,睡眠検査を閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)の診断をするためのツールとして捉える考え方が多いです.「取りあえず無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI)を出してくれたらそれでよい!」という意見もよく聞きます.確かにOSASは睡眠医学において最も多い睡眠関連疾患であり,それを診断することが日々求められています.そしてAHIが治療法の選択を決める指標〔AHIの値が20以上で持続陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure:CPAP)の適応になり,20未満で5以上だと口腔内装具の適応になります〕なので,忙しい日常診療の現場では「とにかくAHIを出してくれ!」となるのもわかります.しかしながら,睡眠関連疾患はOSASだけではありません.睡眠関連疾患国際分類という本を見てもわかる通り,睡眠関連疾患は種々さまざまであり,その診断の多くに睡眠検査が必要になってきます1).OSASの診療ができることは睡眠検査にとって“必要ではあるが,十分ではない”といえます.考えてみれば1つの医学分野にコモンな疾患とまれな疾患があるのは当たり前で,普通はそのどちらにも対応できなければ“専門科”を標榜できません.しかし日本における睡眠医学では,専門医制度はあれども総合的なトレーニングを施すことができる施設は極めてまれなので,OSAS診療に部分的にかかわるような科がその病院の睡眠診療を受けもっていることがほとんどなので,こういう誤解が定着してしまっているのです.
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